1990年1月7日に後楽園ホールで開催されたFMWの「格闘ルネッサンス 第1回総合格闘技オープントーナメント」。この大会は最高すぎるのでプロレス初心者さんにもオススメです。
90年の1月なので第2次UWF解散前で、総合格闘技自体がまだまだ確立される前になり、異種格闘技戦といえば「猪木vsアリ」とか超有名な試合が一般的に認知されてるくらいだったと思う。時代としては新日、全日、UWF、ユニバーサルくらいしか団体がなく、新しく団体出来ることもまだ珍しかったと思う。SWSもちょうどこの時期くらいからじゃなかったかな?国際ってこのときはもう崩壊してたっけ?覚えてない…
まぁ時代背景はそんな感じで90年代になり、プロレス新時代の幕開けとも言えるFMWの旗揚げ。そしてこのインディー臭全開のマッチメイクの大会。↑でも書いたけど総合が確立される前というのは、観客はもちろん、試合をやっている選手本人もまだプロレスとの違いを模索している段階なので、このトーナメントはハプニング満載の本当の意味でめちゃくちゃバーリトゥード。プロレスをヤラセだという方にこそこの大会を見て欲しい。
1回戦
- 栗栖正伸(プロレス)vs元璋淵(テコンドー)
- 松永光弘(空手)vs上田勝次(キックボクシング)
- 浅子文晴(サンボ)vsリ-・ガク・スー(テコンドー)
- ターザン後藤(プロレス)vs今泉敏(柔道)
- 大仁田厚(プロレス)vsザ・シューター(シュート)
松永光弘、上田勝次、浅子文晴はこの後プロレスラーになる(orプロレスの世界で活動する)んだけど、この時点ではアマチュア格闘家として参戦。
栗栖、後藤、大仁田と3人はプロレスラーとしてのキャリアがあるけど、実際のところ栗栖だけが実績のあるレスラーという感じで、大仁田は全日で10年くらいのキャリアを積んだあと怪我で引退し、FMW旗揚げの1989年の時点では5年くらいのブランクからの復帰、後藤は力士からレスラー転向してキャリア3年くらいで海外遠征という名のドサ回りをし、日本国内ではほとんど活動することなく全日を退団してFMWに参加なので、この時点で大仁田、後藤は現役レスラーと言いにくい状態での新団体FMWの中心選手ということになる。
そう考えると栗栖正伸のみ【プロ】レスラーで、大仁田は復帰を目指すレスラー、後藤は国内で実績のほとんどないレスラーであり、それ以外の出場選手はアマチュアの格闘家という異種格闘技トーナメントになる。事前情報だけでお腹いっぱいになるね。
事前情報で言えば唯一のプロ選手の栗栖正伸対テコンドーの韓国人選手の一戦。
この第一試合がトーナメントのすべてを物語ることになる。是非、試合を見てもらいたい。栗栖正伸の異名は「イス大王」。そう栗栖正伸はパイプ椅子で攻撃します!キリッ
もちろん栗栖は場外乱闘に持ち込むんだけど、そこでのイス攻撃が必見です。韓国人テコンドー選手(プロレスは初心者)は、たぶん栗栖のこと知らなかったんだろうね。今と違ってネット(情報)のない時代だし。なので場外で栗栖がパイプ椅子を振り上げるんだけど、この韓国人選手、完全に栗栖の威嚇と思ってたようでまさか椅子を振り下ろしてくるとは思ってなかったはず。もちろん栗栖は躊躇なくパイプ椅子を振り下ろし脳天直撃!!!あまりにも直撃なので、少しタイムラグあって韓国人選手崩れ落ちます。ここ相当リアルで面白い!
おそらく何が起きてるか理解できてないように見える韓国人選手に容赦なく栗栖はパイプ椅子の追撃www。韓国人選手本能的に防御態勢。殺されるって思ったんやろな~
その後リングに戻されるけどすでに勝敗は決していた。韓国人選手、すでに失神状態で何もできない状態。そりゃそやろ。威嚇と思って無防備な状態にパイプ椅子ガチの振り下ろし!
お互いのことを知らない異種格闘技ってこれだから最高。
初戦の決め手はパイプ椅子での殴打ということになります。
松永はこのあと偉大なデスマッチのレスラーになるんだけど、この時点ではアマチュアの空手家で、上田勝次は10数年ぶりに実践復帰の40代の元キックボクサー。選手層の薄い初期FMWの貴重な戦力として活躍することになる。
空手vsキックボクシングの異種格闘技戦なのでスタートは特に特筆すべきこともなく始まり、気付けば上田のキックが故意ではないにしろ松永の急所に入ってしまい、まさかのそこで上田の反則負けの裁定。あれ?第1試合の決め技はパイプ椅子の殴打だったのに…たまたま急所にキックが入って失格って…初期のFMWはカオス。判断基準がよくわからん。
お次は浅子文晴(後のサンボ浅子)とトーナメント二人目のテコンドーの韓国人選手。この選手は1試合目のパイプ椅子の惨劇を目の当たりにしてるからなのか、やられる前にやってやろうという意気込みがひしひしと伝わってくる。グランド(サンボ)対スタンド(テコンドー)なのでスタンディングの時点では手数の多いテコンドーが優勢に試合をすすめる。
浅子ってこのトーナメントがきっかけでFMWに入団することになったはずだけど、この試合は可能性を感じる箇所は少しあった。レスラー転身後の浅子はあの巨体に膝が悲鳴あげているイメージでしょっぱいと言うか強さを感じれる選手ではなかったけど(てか無茶苦茶にされて血みどろなイメージしかない…)、まだ若いということもあり動きは悪くなく、払い腰に関しては100点レベルだと思った。払い腰からのフィニッシュを確立させればよかったのにね。とはいえ当時の総合、またUというもの自体が根付いてない状況では仕方ないのかもしれない。
試合としてはテコンドーの手数にダウンを繰り返す浅子に苛立った韓国人選手が意味わからないけどレフリーに暴行して反則負け。裁定が下ったあとも腑に落ちない様子だったけど、そりゃレフリーに暴行したら反則負けになるやろとしか…ブルース・リーを意識したような韓国人選手がなんとも面白い。時代を感じるよね。
時代背景などで書いたけど、ここでようやく【プロ未満】レスラーの後藤が登場。相手の今泉は柔道をしてたガタイのいいラーメン屋との噂もある。さぁ胡散臭いぞ。レスラーとはいえ後藤はまともな実績などほとんど無いに等しいので、泥臭くなりそうな予感しかしない。
最終的にはジャイアントバックブリーカーで後藤が勝利するんだけど、決め手は直前の頭突き。レスラーの頭突きを連発で喰らったらそりゃ戦意喪失するわな。とてもしょっぱい試合だけど、ジャイアントバックブリーカー使う選手、馬場さん以外久しぶりに見た。しかもそれで試合が決まるなんてかなりレア。
1回戦最後に御大・大仁田登場!相手のザ・シューターって誰?この当時の状況を考えると総合の戦いを唯一できてる選手だった。大仁田って相手の攻撃くらいまくる選手なので基本はタコ殴りにあうわけです。で、流れで場外へ。そこで大仁田も栗栖同様にパイプ椅子でシューターの脳天殴打!この一撃でいっぺんにシューターの動きが悪くなります。
その後、大仁田の必殺サンダーファイヤーパワーボム!いい角度で叩きつけ試合終了。
ただ試合の決め手はパイプ椅子なんだよねw
2回戦
- 浅子文晴(サンボ)vsターザン後藤(プロレス)
- 大仁田厚(プロレス)vsビースト・ザ・バーバリアン(プロレス)
11人参加の変則トーナメントなのでくじ運に恵まれた栗栖と松永は準決勝に進出が決定。2回戦から欧米人がようやく登場。その名もビースト・ザ・バーバリアン!聞いたことねぇ…ブロディー模倣という感じかな?すでに登場した選手、栗栖正伸以外はほぼ素人に毛が生えた程度だったのでこのバーバリアンも似たような感じだろう。女性マネージャーも連れてたりで胡散臭さMAX!
1回戦でしょっぱかった後藤対相手の暴走で勝ち上がった浅子の戦い。期待度低いな~
ただこの試合でも浅子の払い腰は素晴らしくて後藤が脇腹を負傷します。それくらい破壊力のある払い腰。しかしなぜか渾身の払い腰の後、浅子がトップロープに登るというよくわからん状況に。150キロあるのに何するんだろ?ミサイルキックなら破壊力あるなと思って見てたらまさかのダイビングラリアット。それも本人も予想外だったと思うほど前へ飛べず、結果としてダイビンググーパンチになり、受け身がうまくとれず浅子自身も負傷するというオチ。
巨体のせいでスタミナのなくなった浅子の顔面にカウンターで後藤の頭突きが入り決着。んんん~しょっぱい。
大仁田2回戦の相手はビースト・ザ・バーバリアン!無名だけど、この参加メンバーの中では期待したい見るからにパワー系レスラー。この日初めてのプロレスの試合が見れるのかと思ったけど、まぁ初期FMWはカオスなのでそうはいかない。
試合開始から殴る蹴るの攻防で大仁田は場外にエスケープ。追ってきたバーバリアン、本日大活躍のパイプ椅子で大仁田に振りかぶる。ここが見どころなんだけど、ブランクがあるとはいえ大仁田はパイプ椅子で殴られるのに多少慣れがあるからうまく受けようとしたところ、バーバリアンが躊躇していまい、受けようとしていた背中ではなく肩口を殴打。これが逆に痛そうで大仁田悶絶。バーバリアンはその失態を取り返そうと怪奇派レスラーの振る舞いを加速させる。間が持たなくなって近くにいたリングアナ(スタッフ?)の脳天に結構本気でパイプ椅子を振り下ろす。そのままグダグダになり無効試合の判定。ほほう。
そして大仁田、涙の再戦アピール!大仁田劇場はすでにここから始まっていたんだね。で、再戦まではよくある話だけど、まさかのブラスナックル選手権試合として再戦になる。こんなのメジャー団体では考えられないことだけど初期FMWならではだよね。ブラスナックル選手権というのは、FMWのシングルのタイトルになり、このあといろんな経緯があって(新)ブラスナックル選手権に生まれ変わるのでこの時点では(旧)ブラスナックル選手権ということになります。
シングル王者決定戦のおまけ付きの再戦は、無効試合の初戦と同様に殴る蹴ると場外乱闘に終止し、最終的には伝家の宝刀サンダーファイヤーパワーボム2連発で決着。この時代のサンダーファイヤーは角度がいいね。
準決勝
- 栗栖正伸(プロレス)vs松永光弘(空手)
- ターザン後藤(プロレス)vs大仁田厚(プロレス)
ここまでパイプ椅子で殴打と顔面に頭突きがほとんどの試合の決まり手になるという壮絶なトーナメント。勝ち残った4人の名前を見ると今後のFMWの主力になる選手ばかり。
2人とも2試合目なので体力の消耗は感じない状況。松永の蹴りも冴えてるが、今大会唯一の【プロ】レスラー・栗栖正伸。蹴りを受け慣れてるし、のらりくらりと受け流す老獪なテクニック。そして渾身の場外乱闘へ誘導。そこからの狂気に満ちたパイプ椅子での殴打に次ぐ殴打www
場外カウント15まで殴り続けリングアウト勝ち!こんなのどんな有名選手でもリングアウトになるわって思うほどの戦略。栗栖正伸いい選手だな。
FMW所属の日本人レスラー頂上対決ということだけど、まだこの時点では双方ともに役不足。後藤は浅子戦での払い腰で脇腹を負傷。それくらい浅子の払い腰は素晴らしかった。対する大仁田も2回戦で再戦まで行なったのでスタミナほとんどない状態。
もともとブランクだらけの二人がすでに数試合した状態でのこの一戦は予想通り凡戦だった。どっちが勝つとか負けるではなく2人とも戦える状態ではなかったので、ぼんやり始まりぼんやり終わったという印象。
決勝
- ターザン後藤(プロレス)vs栗栖正伸(プロレス)
このトーナメントのことは当時ゴングで読んだ記憶があったのでうっすら覚えてたけど、優勝はどっちだったかなと記憶が曖昧。流れから言うとここで後藤が優勝し、今後のFMWは大仁田と2枚看板というのがしっくり来るなって思ってたけど、全然違ってたwww
さすが初期FMW、予想がつかない…
決勝戦開始前の時点で満身創痍の後藤と、余裕の栗栖とでは選手としてのスペックが違いすぎたってことだと思う。栗栖はほぼダメージ残ってないし、スタミナも全く切れてない。何もできない後藤に対してお手本のような逆エビ固めで貫禄の勝利。
当時動画で観戦することのできなかったマニアックな大会をこうやって見るの楽しくて仕方ない。初期FMW最高やな。青柳館長出てる試合も白熱なのでまた探そう!
大仁田 厚(おおにた あつし、1957年10月25日 – )は、日本のプロレスラー、政治家、タレント、俳優。長崎県長崎市出身。元参議院議員(2001年 – 2007年)。身長181cm、体重77kg。弟(異父弟)は大東文化大学法学部教授の松原孝明。2012年に現役プロレスラーとしてヘルパー2級を取得。
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ターザン後藤(ターザンごとう、1963年8月16日 – )は、日本のプロレスラー、元大相撲力士。本名:後藤 政二(ごとう まさじ)。
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栗栖 正伸(くりす まさのぶ、1946年11月15日 – )は、日本の元プロレスラー。鹿児島県肝属郡出身。身長175cm、体重100kg。
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