映画「リバー、流れないでよ」

ストーリーの概要

京都・宇治。大晦日の夜、花火大会の準備に奔走する美優(藤谷理子)は、高校時代からの友人たちと数年ぶりに再会します。思い出話に花を咲かせ、旧交を温める楽しい夜を過ごしますが… 翌朝目を覚ますと、そこは昨日と同じ大晦日。状況を把握できない美優は、デジャヴかと思いながらも、再び友人たちと花火大会の準備に取り掛かります。しかし、周囲の人々の言動、街の風景、すべてが昨日と寸分違わず繰り返されていることに気づき、愕然とします。

タイムループに閉じ込められた美優と友人たち。最初は戸惑いながらも、やがて「永遠に続く大晦日」を謳歌し始めます。好きなだけお酒を飲んだり、普段はできない大胆な行動に挑戦したり、タイムループならではの「遊び」を満喫する彼ら。しかし、楽しいだけの時間は長くは続きません。繰り返される一日の中で、美優は友人たちの隠された本音や、複雑に絡み合った人間関係を目の当たりにすることになります。

タイムループから抜け出す鍵はどこにあるのか?そして、美優はこの奇妙な体験を通して、何を見つけるのか?

評価

「リバー、流れないでよ」は、タイムループというSF的な設定を、青春群像劇という普遍的なテーマと見事に融合させた作品です。京都府宇治市を舞台に、繰り返される一日の中で揺れ動く若者たちの心情を、繊細かつユーモラスに描いています。

監督・脚本を務めるのは、京都を拠点に活動する劇団「ヨーロッパ企画」の主宰・上田誠。緻密な構成力と、独特のテンポで繰り出される会話劇は、まさにヨーロッパ企画の真骨頂と言えるでしょう。映画「カメラを止めるな!」の脚本協力も務めた上田監督の手腕が光る、エンターテイメント性あふれる作品に仕上がっています。

主演の藤谷理子をはじめ、ヨーロッパ企画のメンバーが個性豊かなキャラクターを熱演しています。アドリブを交えた自然体の演技は、まるで本当の友人同士のような親近感を感じさせます。特に、タイムループの中で変化していく彼らの表情や言動は必見です。

また、ロケ地となった宇治市の美しい風景も見どころの一つ。宇治川の雄大な流れ、平等院鳳凰堂の荘厳な佇まい、そして花火が打ち上がる夜空など、情緒あふれる映像美が、物語に深みを与えています。

作品情報

  • リリース年:2023年
  • ジャンル:SFコメディ、青春ドラマ
  • 上映時間:87分
  • 監督・脚本:上田誠
  • 制作:ヨーロッパ企画
  • 配給:ティ・ジョイ

出演者

  • 藤谷理子(美優 役): タイムループに巻き込まれる主人公。周囲の変化にいち早く気づき、戸惑いながらも状況を受け入れようとする。
  • 永野宗典(エイジ 役): 美優の友人。お調子者でムードメーカー的存在だが、実は心に秘めた想いがある。
  • 角田貴志(タカシ 役): 美優の友人。冷静沈着で、タイムループの謎を解き明かそうとする。
  • 久保史明(フミオ 役): 美優の友人。少し臆病な性格で、タイムループに翻弄される。
  • 酒井善史(石田 役): 美優の友人。マイペースで、周囲の状況にあまり動じない。
  • 中川晴樹(山田 役): 花火師。花火大会成功のため、奔走する。
  • 本多力(神崎 役): 謎の男。タイムループに何か関係があるのだろうか?

制作スタッフ

  • 監督・脚本:上田誠
  • 撮影:灰原隆裕
  • 照明:松隈信一
  • 録音:久連石由文
  • 美術:金子貴
  • 音楽:伊藤忠之
  • 主題歌:諏訪雅「リピート」

作品に関係するエピソード

  • 上田誠監督は、本作の制作にあたり、映画「恋はデジャ・ブ」や「ハッピー・デス・デイ」などのタイムループ作品を参考にしたそうです。
  • ヨーロッパ企画は、2004年に公開された映画「サマータイムマシン・ブルース」でもタイムループを題材にしています。
  • 映画の撮影は、実際に京都府宇治市で行われました。地元住民の協力のもと、花火大会のシーンなどもリアルに再現されています。
  • 主題歌「リピート」は、ヨーロッパ企画のメンバーである諏訪雅が作詞作曲を担当。繰り返される一日を表現した歌詞と、キャッチーなメロディーが印象的な楽曲です。

URL

公式サイト:https://www.europe-kikaku.com/river/

その他

映画「リバー、流れないでよ」は、単なるタイムループものにとどまらない、人間ドラマ、コメディ、そして青春映画の要素が詰まった、見ごたえのある作品です。緻密な脚本、個性豊かなキャラクター、そして美しい映像美が、観る者を飽きさせません。ぜひ劇場で、タイムループに翻弄される若者たちの物語を体感してください!