2024年12月17日、株式会社リットーミュージックより刊行された書籍『インタビュー:坂本龍一』は、1980年から2017年にかけて雑誌「キーボード・マガジン」と「サウンド&レコーディング・マガジン」に掲載された坂本龍一へのインタビュー記事68本を集成した貴重なアーカイブです。坂本龍一氏がどのように音楽と向き合い、時代とともにどのように音楽観を変化させてきたのかを、氏の言葉を通して追体験できる構成となっています。世界の音楽シーンに影響を与えた偉大な音楽家の足跡と功績を、改めて再確認できるだけでなく、その創作の秘密にも迫ることができる一冊と言えるでしょう。1
坂本龍一という音楽家
坂本龍一氏は、1952年東京都生まれの音楽家、作曲家、音楽プロデューサー、俳優。東京藝術大学大学院を修了後、1978年にイエロー・マジック・オーケストラ(YMO)のメンバーとしてデビュー。YMOは、テクノポップ・ブームを巻き起こし、日本国内のみならず、世界的な人気を博しました。革新的な音楽性とパフォーマンスで、当時の音楽シーンに大きな衝撃を与えたのです。坂本氏は、YMOの活動と並行して、ソロ活動も展開。映画音楽、クラシック音楽、オペラ、現代音楽など、幅広いジャンルで活躍しています。代表作に、映画『戦場のメリークリスマス』のテーマ曲、映画『ラストエンペラー』のサウンドトラックなどがあります。
本書の魅力
本書最大の魅力は、坂本龍一氏自身の言葉で語られる、音楽に対する真摯な姿勢、そして時代とともに変化していく音楽観に触れられる点にあります。インタビューは、YMO時代の初期から、ソロ活動、映画音楽、そして近年における社会活動まで、彼のキャリア全体を網羅しており、氏の音楽的変遷を包括的に捉えることができます。これは、長年にわたり氏の活動を記録してきた「キーボード・マガジン」と「サウンド&レコーディング・マガジン」だからこそ実現できた、他に類を見ない貴重なアーカイブと言えるでしょう。
各インタビューでは、当時の坂本氏の創作活動や、音楽に対する考え方が詳細に語られています。例えば、YMO時代には、テクノロジーと音楽の関係性、新しい音楽表現への探求について熱く語っています。「テクノロジーは、音楽表現の可能性を無限に広げてくれる。しかし、同時に、人間的な感性を失わないように注意しなければならない」と、当時すでにテクノロジーの進化と音楽の未来を見据えていたことが伺えます。また、ソロ活動においては、自身の音楽的ルーツ、作曲の手法、そして音楽を通して社会に伝えたいメッセージなどについて、深く掘り下げています。「音楽は、単なる娯楽ではなく、社会と繋がるための powerful なツールになり得る」と語り、音楽を通して社会に貢献したいという強い思いが伝わってきます。
さらに、本書には、坂本氏が影響を受けた音楽家や、彼自身の音楽に影響を与えた出来事なども語られており、彼の音楽の背景にあるものを理解する上で貴重な資料となっています。
坂本龍一 on the Future of Books
デジタル化が加速する現代において、坂本氏は「本」の未来についても独自の視点を持っています。紙媒体とデジタル媒体のそれぞれの特性を理解した上で、「本は、単なる情報の伝達手段ではなく、五感を刺激する存在であるべきだ」と述べています。紙の質感、インクの匂い、ページをめくる感触など、デジタルでは再現できない「体験」こそが、本の価値を高めていると氏は考えているようです。
坂本龍一 and the Tohoku Youth Orchestra
坂本氏は、音楽を通じた社会貢献にも積極的に取り組んでおり、その一つが「東北ユースオーケストラ」です。東日本大震災の被災地である東北3県の若者たちで構成されたこのオーケストラは、坂本氏が音楽監督を務め、若手音楽家の育成と地域社会の活性化に貢献しています。本書では、オーケストラ設立の背景や、若者たちとの交流を通して得た経験、そして音楽の持つ力について語られています。
環境に配慮した出版
本書は、坂本氏の環境問題への意識を反映し、株式会社モア・トゥリーズが推進する「more trees」の活動に賛同しています。「more trees」は、森林保全団体への寄付や植林活動を通じて、持続可能な社会の実現を目指しており、本書の制作には、森林管理協議会(FSC)認証紙が使用されています。
出版社からのコメント
株式会社リットーミュージックは、「キーボード・マガジン」、「ギター・マガジン」、「サウンド&レコーディング・マガジン」など、数多くの音楽専門誌を出版している出版社です。長年にわたり音楽シーンに貢献してきた同社だからこそ、坂本氏のインタビューをこのような形でまとめることができたと言えるでしょう。
出版社からは、「本書は、坂本龍一という偉大な音楽家の、創造の軌跡を辿る旅のようなものです。彼の音楽と人生に触れることで、読者の皆様もきっと、新たな発見と感動を得られることでしょう。」とコメントされています。
結論
『インタビュー:坂本龍一』は、坂本龍一氏の音楽と人生を深く理解するための必読書と言えるでしょう。氏の言葉を通して、音楽の奥深さ、そして創造することの喜びを感じることができるはずです。 本書は、単なる音楽家のインタビュー集ではありません。坂本龍一という一人の人間の、時代と社会に対する鋭い洞察、そして未来への希望が詰まった、まさに「人生の記録」と言えるでしょう。音楽ファンはもちろんのこと、坂本氏の思想や生き方に興味のある人、そしてこれからの時代を生きるすべての人にとって、多くの示唆を与えてくれる一冊です。
項目 | 内容 |
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タイトル | インタビュー:坂本龍一 |
出版社 | 株式会社リットーミュージック |
発売日 | 2024年12月17日 |
価格 | 5,940円(本体5,400円+税10%) |
仕様 | A4変形判 |
ISBN | 9784845641758 |
関連リンク
リットーミュージック:https://www.rittor-music.co.jp/product/detail/3124221002