1986年に公開されたフランス映画「ベティ・ブルー 愛と激情の日々」。ジャン=ジャック・ベネックス監督による、フィリップ・ジャン原作の小説「37°2 le matin」を映画化した作品です。強烈な個性を持つ若い女性ベティーと、彼女に翻弄されながらも深く愛する男性ゾルグの、激しくも破滅的な愛を描いた物語です。
鮮烈な色彩と官能的な映像美、そしてガブリエル・ヤレドによる印象的な音楽は、公開当時大きな話題を呼び、世界中でカルト的な人気を博しました。フランス映画におけるラブストーリーのイメージを塗り替えるほどのインパクトを与え、ポスターのビジュアルも相まって、多くの観客を魅了しました。日本でも1987年に公開され、若者を中心に熱狂的な支持を集めました。 3 ベティーを演じたベアトリス・ダルはこの作品で鮮烈なデビューを飾り、ゾルグ役のジャン=ユーグ・アングラードと共に、その後のフランス映画界を代表する俳優となりました。
作品の概要
「ベティー・ブルー 愛と激情の日々」は、愛と狂気をテーマにした作品であり、その鮮烈な映像美と音楽、そして俳優たちの熱演が、多くの観客に衝撃を与えました。 特に、色彩の使い方が印象的で、青、黄、赤といった鮮やかな色が、登場人物たちの心情や物語の展開を象徴的に表現しています。
項目 | 内容 |
---|---|
原題 | 37°2 le matin |
製作年 | 1986年 |
製作国 | フランス |
監督 | ジャン=ジャック・ベネックス |
脚本 | ジャン=ジャック・ベネックス |
原作 | フィリップ・ジャン「37°2 le matin」 |
音楽 | ガブリエル・ヤレド |
出演 | ベアトリス・ダル、ジャン=ユーグ・アングラード、ジェラール・ダルモン、コンスエロ・デ・ハヴィランド |
上映時間 | 120分(オリジナル版)、185分(ディレクターズ・カット版) |
受賞歴 | セザール賞最優秀作品賞 |
あらすじ
舞台は南フランスの海辺。バンガローで便利屋として働くゾルグは、ある日、自由奔放な若い女性ベティーと出会います。 8 ベティーの奔放さに強く惹かれたゾルグは、彼女と同棲生活を始めます。二人は情熱的な日々を過ごしますが、ベティーはゾルグが書いた小説を出版社に送りつけるなど、次第に常軌を逸した行動をとるようになります。 8 ゾルグはベティーを深く愛する一方で、彼女の激しい感情の波に翻弄され、疲弊していくのでした。
ベティーの精神状態は悪化し、自傷行為を繰り返すようになります。ゾルグは、そんなベティーを支えようとしますが、彼女の行動はエスカレートし、ついには放火事件を起こしてしまいます。 二人はパリへと逃亡しますが、ベティーの精神状態はさらに悪化し、ゾルグは彼女を精神病院に入院させます。ゾルグはベティーを愛するが故に、彼女を苦しみから解放するために、ある決断を下すのでした。
批評・レビュー
「ベティー・ブルー」は、その激しい描写と衝撃的な内容から、公開当時から賛否両論を巻き起こした作品です。Metacriticのスコアは56点と、批評家筋の評価は賛否両論です。しかし、セザール賞最優秀作品賞を受賞するなど、高い評価を得ているのも事実です。一方で、観客からの評価は高く、Filmarksでは5点満点中3.8点の評価を得ています。
Filmarksのレビューでは、「ベティーの生き方に憧れる」「愛にすべてを捧げられるのは美しい」といった肯定的な意見がある一方で、「娘には見せられない」「刺激が強すぎる」といった否定的な意見も見られます。 また、「ゾルグの献身的な愛に感動した」「ベティーの狂気を通して人間の脆さを感じた」といった感想も多く寄せられています。
本作は、単なる恋愛映画ではなく、精神疾患という難しいテーマにも切り込んでいます。ベティーの精神状態の悪化と、それを支えようとするゾルグの姿は、精神疾患を抱える人々とその周囲の人々の苦悩をリアルに描き出しています。
日本での公開状況・視聴方法
日本では1987年に劇場公開され、その後、ビデオ化、DVD化もされました。1992年には未公開シーンを追加した「ベティー・ブルー インテグラル」が公開され 、2012年には、ジャン=ジャック・ベネックス監督自らが監修したHDデジタルリマスター版がBlu-rayとDVDで発売されました。
アメリカでは、2004年にディレクターズ・カット版のDVDが、 13 2019年にはクライテリオン・コレクションからBlu-rayが発売されています。
現在、「ベティー・ブルー 愛と激情の日々」は以下の方法で視聴することができます。
豆知識・裏話
- 映画の原題「37°2 le matin」は、女性が最も妊娠しやすい体温である37.2度を指しています。これは、女性の排卵時の体温であり、生命の誕生と結びついていることを暗示しています。
- ベティーが劇中で着用している黄色のジャケットは、衣装デザイナーのエリザベス・タヴェルニエがパリの蚤の市で5ドル以下で購入したものです。このジャケットは、ベティーの自由奔放な性格を表す象徴的なアイテムとなっています。
- 映画の冒頭のビーチシーンは、ナルボンヌ近くのグルイッサンで撮影されました。美しい自然の中で、ベティーとゾルグの愛が芽生える様子が印象的に描かれています。
- ベティー役のベアトリス・ダルとゾルグ役のジャン=ユーグ・アングラードは、撮影中、役柄を超えた親密な関係にあったと言われています。二人の熱演は、こうした関係性から生まれたものかもしれません。
- 映画全体を通して、青い色が重要な役割を果たしています。青い空、青い海、青い服など、様々な形で青い色が登場し、登場人物たちの心情や物語のテーマを象徴的に表現しています。
- ある映画評論家は、「ベティー・ブルー」を「ファイト・クラブ」のような映画だと評しています。どちらも、自己破壊的な行動や社会への反逆といったテーマを描いており、人間の心の闇に迫る作品と言えるでしょう。
結論
「ベティー・ブルー 愛と激情の日々」は、強烈な愛と狂気を描いた、フランス映画史に残る傑作です。その鮮烈な映像美と音楽、そして俳優たちの熱演は、観る者に忘れられない衝撃を与えます。
ベティーとゾルグの愛は、激しく、官能的で、そして破滅的です。二人は互いに強く惹かれ合いながらも、ベティーの精神状態の悪化によって、その愛は歪み、悲劇的な結末を迎えます。この映画は、愛の持つ光と影、そして人間の心の脆さを、赤裸々に描き出しています。
「ベティー・ブルー 愛と激情の日々」は、単なる恋愛映画の枠を超え、愛の本質、精神疾患、社会 norms といった、様々なテーマを内包した作品です。観る者それぞれに、異なる解釈と深い感動を与える、まさに傑作と言えるでしょう。