映画「氷菓」

2017年公開、山崎賢人&広瀬アリス主演の映画「氷菓」は、米澤穂信の人気小説を原作とした青春ミステリーです。

「やらなくてもいいことなら、やらない」がモットーの省エネ主義者・折木奉太郎(山崎賢人)。彼は、高校生活を平穏に過ごしたいと願っていましたが、姉の命令で廃部寸前の古典部に入部することに。そこで出会ったのは、好奇心旺盛なお嬢様・千反田える(広瀬アリス)。「私、気になります!」が口癖のえるは、奉太郎を巻き込み、学園に潜む様々な謎を解き明かしていきます。

古典部で巻き起こる、日常の謎

物語の舞台は、岐阜県高山市にある架空の高校。奉太郎たちは、古典部を舞台に、一見平凡な日常に潜む、しかしどこか心をくすぐるような謎に挑みます。

  • 33年前に発行された古典部の文集「氷菓」に隠された秘密とは? これは、えるの叔父である関谷純が、33年前に起こったある事件と深く関わっていることが徐々に明らかになっていきます。奉太郎は、文集に残された謎のメッセージや、関係者への聞き込みを通して、事件の真相に迫ります。
  • 図書館で起こった、不可解な本の貸し出し事件の真相は? 図書館で、特定のジャンルの本だけが貸し出されるという奇妙な現象。奉太郎は、図書館の構造や本の配置、そして貸出記録を分析し、犯人の意図を探ります。
  • 文化祭で上映される自主制作映画に隠されたメッセージとは? 映画研究会が制作した自主制作映画には、不可解なシーンやセリフが散りばめられています。奉太郎は、映画の制作過程や登場人物の関係性を分析し、隠されたメッセージを解読しようとします。

これらの謎解きを通して、奉太郎は、物事を深く観察し、論理的に思考する能力を高めていきます。えるの「気になります!」という好奇心は、奉太郎の推理力を刺激し、彼を新たな世界へと導くのです。

省エネ少年と好奇心少女、二人の関係性の変化

「氷菓」の魅力は、ミステリー要素だけではありません。奉太郎とえる、そして古典部の仲間たちの、繊細な心の交流も見どころの一つです。

  • 最初は、えるのペースに巻き込まれ、面倒くさそうにしていた奉太郎。えるの「私、気になります!」という言葉に、うんざりしながらも、彼女の熱意に押され、つい謎解きに協力してしまいます。
  • しかし、えるの純粋な好奇心と、物事の本質を見抜く洞察力に触れるうちに、次第に心を開いていきます。えるの真っ直ぐな視線、そして知識欲に満ちた表情に、奉太郎は心を揺り動かされ、自分自身の殻を破っていくのです。
  • えるもまた、奉太郎の推理力に尊敬の念を抱き、彼との距離を縮めていきます。奉太郎の冷静な分析力、そして鋭い洞察力に惹かれ、彼を「頼りになる存在」として意識し始めます。

二人の間には、友情とも恋愛とも言い切れない、淡く切ない感情が芽生えていきます。

原作小説の魅力を忠実に再現

映画「氷菓」は、原作小説の世界観を見事に映像化しています。

  • レトロな雰囲気漂う高山の街並み、
  • 古典部の部室の細部までこだわった美術セット、
  • そして、登場人物たちの性格や関係性を丁寧に描写…

原作ファンも納得の、完成度の高い作品と言えるでしょう。特に、えるの仕草や表情、そして「私、気になります!」というセリフは、原作のイメージそのままに、広瀬アリスが見事に演じ切っています。

作品情報

  • 公開年:2017年
  • 監督:安里麻里
    安里麻里監督は、「バイロケーション」や「劇場版 零〜ゼロ〜」など、ミステリー作品を多く手がけています。
  • 脚本:安里麻里
  • 原作:米澤穂信「氷菓」
  • 出演:山崎賢人、広瀬アリス、小島藤子、岡山天音
  • 主題歌:イトヲカシ「アイオライト」
  • イトヲカシは、伊東歌詞太郎と宮田’レフティ’リョウからなる音楽ユニット。彼らの楽曲は、青春の繊細な心情を表現しており、映画の世界観と見事にマッチしています。

『〈古典部〉シリーズ』(こてんぶシリーズ)は、米澤穂信の推理小説のシリーズ。角川書店より2001年10月から刊行されている。

〈古典部〉シリーズ – Wikipedia

作品にまつわるエピソード

  • 原作の舞台となった岐阜県高山市で、ロケが行われました。映画に登場する高山駅や古い町並みは、実際に高山を訪れてみたくなるような魅力的な場所です。
  • 映画公開に合わせて、高山市の観光客が増加したそうです。映画のロケ地マップが作成されたり、登場人物にちなんだメニューが販売されたりと、地域活性化にも貢献しました。
  • 主人公の折木奉太郎を演じた山崎賢人は、この役を演じるために、体重を5kg減量したそうです。奉太郎の繊細な雰囲気を出すために、食事制限や運動を頑張ったそうです。
  • 千反田えるを演じた広瀬アリスは、えるのトレードマークである長い髪を、地毛で再現しました。えるの清楚で可憐なイメージを表現するために、髪を伸ばし、丁寧にヘアケアをしていたそうです。

関連リンク

映画「氷菓」は、青春ミステリーとして楽しめるだけでなく、繊細な人間ドラマ、そして淡い恋物語としても見応えのある作品です。